ボリンジャーバンドを使った逆張りトレードは、「相場の大半がバンド内に収まる」ことを利用して行われるものです。例えば±3σに収まる確率は理論上99.7%と計算されるため、一時的にバンドを逸脱したとしても、それはあくまで一時的なものでありすぐにバンド内に戻ってくることが期待されます。
しかし、これは相場の不確実性が正規分布と仮定した場合の理論値であって、実際にこの確率でバンド内に収まることを保証している訳ではありません。もしこの理論値に間違いがあれば、トレードを悪い結果に導いてしまう可能性があります。
そこで今回は、相場がバンド内に収まる確率を実データを用いて検証してみたいと思います。
また、±xσ(xは1,2,3のいずれか)にタッチしたときに順張りエントリー・逆張りエントリーを行うトレード手法のバックテストをそれぞれ行うことで、その優劣の違いも検証してみたいと思います。
ボリンジャーバンドを使って順張りすべきか逆張りすべきかで迷われている方は、是非参考にしてみてください。
ボリンジャーバンドに関して
過去適当な個数のローソク足を対象に、その終値からなる平均および標準偏差を上下にプロットしたものがボリンジャーバンドです。
仮に相場の不確実性が正規分布に従うと考えると、標準偏差をσで表記すれば、各バンドに収まる確率は以下となります。
- ±1σ内 → 約68.3%
- ±2σ内 → 約95.4%
- ±3σ内 → 約99.7%
相場は平均値(移動平均線)に近い価格で推移する確率が高く、そこから離れれば離れるほど推移する確率が低くなります。これは経験的に考えてもまず間違いないでしょう。ボリンジャーバンドはその確率が一体いくらぐらいなのかを定量的に示したものです。
一方、肝心なのは上記の数字ではなく、これらのバンドを逸脱する確率です。例えば±3σの場合は0.3%の数字に着目する必要があります。
確率0.3%の事象が発生するのは極めて珍しいことではありますが、それが連続するのは更に珍しいこととであり、ボリンジャーバンドを使った逆張りトレードはこの理屈に立脚したものと思われます。ローソク足2個続けてバンドを逸脱することはないだろうという考えに基づいています。
さて、この99.7%とか0.3%とか確率ですが、これはあくまで相場の不確実性が正規分布である場合の理論値です。実際問題、相場の不確実性が正規分布に従うかどうかがわからないため、この数字の真偽は疑う余地があります。
仮に間違っていた場合、自動売買している方だけでなく、単に「±2σ(あるいは±3σ)を逸脱したら逆張りエントリー」ぐらいの裁量トレードをしている方にとっても、長期的なパフォーマンスに違いが出てきますので無視できない問題になるかと思います。
検証結果
では実際に検証結果を見てみましょう。バックテストは以下の条件にて行いました。
通貨ペア | USD/JPY |
スプレッド | 0.3pips(0.3銭) |
検証期間 | 2013/1/1 ~ 2021/12/31 |
ボリンジャーバンド期間 | 20 |
そして以下が検証結果です。検証期間中のローソク足総数に対してバンド内に収まったローソク足の割合を表しています。収まったか否かは終値で判断しています。
時間足 | ローソク足総数 | ±1σ | ±2σ | ±3σ |
理論値 | - | 68.3% | 95.4% | 99.7% |
15分足 | 223489 | 49.1% | 87.3% | 98.6% |
1時間足 | 55885 | 46.6% | 87.3% | 98.6% |
4時間足 | 14130 | 46.0% | 87.3% | 99.0% |
日足 | 2469 | 47.3% | 88.3% | 99.3% |
全ての時間足、全てのバンド幅において、正規分布より低い確率となっています。つまり逆張り派にとっては、正規分布を想定して見積もった結果より悪い結果となる可能性が高いということになります。
特に±1σはかなり乖離があるように見えます。正規分布を仮定した場合より平均値から離れて推移しているということかと思います。
一方、バンドウォークを使うなど順張り派にとっては良い結果となる可能性が高いということでしょうか。
追加検証
そこで簡単に、順張り・逆張りそれぞれのトレードによるバックテストを行い、その結果の優劣を見てみたいと思います。
検証に用いたトレード手法な簡単なもので、±xσを超えていれば順張りor逆張りでエントリーし、それと同時に3×ATRのトレーリングを設定します。例えばx=1で順張りのバックテストをしているとすれば、+1σにタッチしたときに現在価格-3×ATRからトレールを仕掛けるトレードとなります。逆に-1σにタッチしたときは現在価格+3×ATRからのトレーリングです。ATRのパラメータである期間は最も一般的な14とします。
15分足
括弧の左の数字はプロフィットファクタです。そのため1より大きければ期待値はプラスで、1未満であれば期待値はマイナスです。括弧の中の数字は取引回数です。
±1σ | ±2σ | ±3σ | |
順張り | 1.04(9655) | 1.05(9034) | 1.06(4082) |
逆張り | 0.97(9475) | 0.97(9395) | 0.95(4621) |
結果を見ると、常に順張りに軍配が上がります。期待値がプラスかマイナスを分かつ境になっているようです。
1時間足
表の見方は15分足と同様です。
±1σ | ±2σ | ±3σ | |
順張り | 1.13(2542) | 1.11(2295) | 1.24(995) |
逆張り | 1.05(2581) | 0.93(2484) | 1.00(1104) |
15分足に比べて逆張りも頑張っているみたいですが、こちらも順張りの勝利です。
4時間足
表の見方は15分足と同様です。
±1σ | ±2σ | ±3σ | |
順張り | 1.06(664) | 1.13(554) | 1.18(186) |
逆張り | 1.18(640) | 1.17(576) | 1.24(201) |
こちらは逆張りが良いようですが、取引回数が1000回未満と少ないため、統計的信憑性は低い可能性が高いです。
全体的に順張りの方が良さそうな印象です。ボリンジャーバンドはバンドウォークで使うのが適切ということでしょうか。バンドウォークのパフォーマンスに関しては過去に検証をしてますのでそちらをご参照ください。
まとめ
本記事では、ボリンジャーバンドの各バンド内に収まる確率を実データで検証し、順張り・逆張り各トレード戦略の優劣をバックテストを用いて検証しました。以下に結論となる重要なポイントを示します。
以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。