短期・中期・長期の移動平均線が順番に揃った状態を一般的にパーフェクトオーダーと言うようです。
強いトレンドを示すシグナルとして解釈されますが、実際これを頼りにトレードして勝てるのか、疑問に思われたことはないでしょうか?毎回必ず勝てることはなくとも、期待値の意味で収支はプラスなのかは事前に確認しておきたいものです。
また別の課題として、パーフェクトオーダーはその始まりと終わりが自明でない点が挙げられます。トレード成績の改善のためには、その中でも更に最適な使い方を知っておく必要があります。
本記事では、パーフェクトオーダーを使ったトレードに関して、そのエントリーと手仕舞いにいくつかのバリュエーションを用意し、それぞれの組み合わせに対してバックテストを行いたいと思います。そしてその検証結果を比較することで、パーフェクトオーダーの最適な使い方を示したいと思います。
定義と問題提起
冒頭でも述べましたが、パーフェクトオーダーとは短期・中期・長期の移動平均線が順番に揃った状態を言います。
下図がその一例です。白・黄・緑の順番でそれぞれ短期・中期・長期の移動平均線を意味します。上から下にこの順番で並んでいるため、これは強い上昇トレンドを指すことになります。
さて、いくつかのサイトや文献を漁ってみましたが、パーフェクトオーダーと言った場合に共通する特徴は上記で終わりです。少なくともこれだけだと具体的にいつがパーフェクトオーダーの始まりで、いつがその終わりなのかが明確でありません。
「順番に並び始めたらパーフェクトオーダーの始まりでいいんでしょう?」と思われるかも知れません。勿論それでも構わないのですが、その場合は下図もそれに当てはまることになります。
白い矢印の箇所に注目です。このタイミングでは上から短期・中期・長期と移動平均線が並んでいるため、これは上述した定義だとパーフェクトオーダーを構成しています。
ですがここで迷わず買い判断が出来るかと言われるとどうでしょう。少なくとも、短期の移動平均線である白線は下方向を向いていますし、長期の移動平均線である緑線もずっと横這いで上方向の勢いがありません。今のままではかなり広範な相場状況もパーフェクトオーダーとして含まれることになってしまいます。
言いたいこととしては、単にパーフェクトオーダーとだけ言った場合、その始まりと終わりは依然曖昧なままということです。そしてそこを明確に定義することも出来ません。肝心なのは、数ある始まりと終わりの判断基準の中で、何を用いるのが最もパフォーマンスが高くなるのかということです。
本記事ではここをバックテストで追及してみたいと思います。
検証条件
本記事では以下に挙げるように、エントリーのパターンを2種類、手仕舞いのパターンを3種類用意し、各組み合わせ(2×3=6パターン)ごとにバックテストを行うことで、パフォーマンスの比較を行いたいと思います。
尚、今回検証では時間足として15分足、1時間足、4時間足を対象とします。それぞれ前から、スキャルピング、デイトレード、スイングトレードを意識したものになります。
エントリーのパターン
エントリー1:順番が揃えばエントリー
上から順番に短期・中期・長期の移動平均線が揃えば買いエントリーします。売りはその逆です。
前章で具体例を示して否定的なことを述べましたが、実はこれで十分だったというオチはあり得る話です。
エントリー2:順番が揃って尚且つ、移動平均線の方向も揃う
エントリー1に対して、各移動平均線の上昇・下落に関する方向も揃うことを条件として追加します。例えば買いの場合、以下三つの条件が加わることになります。
- 前回時刻短期の移動平均線<現在時刻短期の移動平均線
- 前回時刻中期の移動平均線<現在時刻中期の移動平均線
- 前回時刻長期の移動平均線<現在時刻長期の移動平均線
売りの場合は不等号が逆になります。前章でパーフェクトオーダーらしくない例を示しましたが、あのような条件でのエントリーを避けることが可能になります。
手仕舞いのパターン
手仕舞い1:ドテンのみ
例えば買いポジションを保有している状態であれば、次の売りパーフェクトオーダーが発生するまで買いポジションをガチホします。どれだけ横這いが続いたとしても、反対方向のエントリーによってドテンするまで手仕舞いしません。
おそらくハイリスク・ハイリターンなトレード手法になると思います。裁量トレードではまず用いられることはないでしょうが、パーフェクトオーダーそのもののパフォーマンスを知る上では重要なパターンです。
手仕舞い2:
エントリーの条件が満たされなくなったら手仕舞いします。
例えば買いポジションを保有しているとき、上から順番に中期・短期・長期の移動平均線が並べば手仕舞いします(手仕舞い1ではポジションを保有し続けます)。
手仕舞い1だと不必要にポジションを持ち続けることになりますが、それを緩和したような位置づけになり、こちら方が裁量トレードに状況がより近くなります。
手仕舞い3:
エントリーと同時にATRの3倍の値幅でトレーリングします。
この手仕舞いパターンでは、パーフェクトオーダーの終わりがいつかはあまり関心がなく、トレンドが終了すればそこで手仕舞いです。裁量トレードでトレンドフォローする場合に状況が近くなります。
以上が今回の検証条件の説明となります。
検証結果
それでは実際に結果を見てみたいと思います。バックテストは以下の条件にて行いました。
通貨ペア | USD/JPY |
スプレッド | 0.3pips(0.3銭) |
検証期間 | 2013/1/1 ~ 2021/12/31 |
ポジション | 0.1Lot(10000通貨) |
資産 | 100万円 |
短期移動平均線期間 | 25 |
中期移動平均線期間 | 75 |
長期移動平均線期間 | 200 |
ATR期間 | 14 |
15分足
括弧の左の数字はプロフィットファクタです。そのため1より大きければ期待値はプラスで、1未満であれば期待値はマイナスです。
括弧の中の数字は取引回数です。文字色が灰色の箇所がありますが、これは取引回数が1000回に満たない場合です。個人的には1000回に満たない結果は信用しない方がいいと考えてます。
エントリー1 | エントリー2 | |
手仕舞い1 | 1.13(1111) | 1.19(835) |
手仕舞い2 | 1.13(2306) | 1.05(7538) |
手仕舞い3 | 1.05(7097) | 1.13(4593) |
15分足ではどの組み合わせでもプロフィットファクタは1を超えます。エントリー1と2の優劣はつけがたいですが、手仕舞いに関しては総じて1が優秀のようです。
下図は手仕舞い1・エントリー1のバックテストの詳細です。長い目で見れば右肩上がりですが、やはりハイリスク・ハイリターンの印象は拭えません。
下図はエントリー2・手仕舞い1のバックテストの詳細です。取引回数が1000回ないため取り扱いには注意が必要です。
下図はエントリー2・手仕舞い3のバックテストの詳細です。取引回数が4593回と多いため、統計的に十分信頼できる結果と言っていいのではないでしょうか。
1時間足
表の見方は15分足と同様です。
エントリー1 | エントリー2 | |
手仕舞い1 | 0.93(297) | 0.98(227) |
手仕舞い2 | 1.09(591) | 1.11(1732) |
手仕舞い3 | 1.01(1903) | 1.05(1273) |
1時間足では、エントリーと手仕舞い共に2が良いようです。つまり、移動平均線が並ぶ順番だけでなくその方向も揃った時にエントリーし、更にこの条件を満たさなくなった瞬間手仕舞いするのが良いということになります。
下図はエントリー2・手仕舞い2のバックテストの詳細です。右肩上がりとはいえあんまり安定しませんね。
4時間足
表の見方は15分足と同様です。
エントリー1 | エントリー2 | |
手仕舞い1 | 0.96(75) | 1.01(59) |
手仕舞い2 | 0.93(155) | 1.08(404) |
手仕舞い3 | 0.98(495) | 0.98(317) |
全ての組み合わせにおいて取引回数が1000回に満たないため、4時間足などのスイングトレードにおいて、パーフェクトオーダーの出現確率は低く、統計的に根拠のあるトレードは実施が難しいということになるかと思います。
プロフィットファクタも小さいため、無理やり使う必要性もないと思われます。
まとめ
本記事では、パーフェクトオーダーを使ったトレードに関して、いくつかのエントリー・手仕舞いのパターンを用意してバックテストを行いました。以下に結論となる重要なポイントを示します。
今後は、移動平均線の最適な期間などを分析してみたいと考えています。
以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。