移動平均線のゴールデンクロスで勝てるのか?最適な使い方をバックテストで徹底検証

一言に移動平均線といっても、その種類は「単純」、「加重」、「指数平滑」といくつかあり、またそれぞれにおいてもパラメータである「期間」をどう設定するかによってその後のパフォーマンスは変わってきます。

どれを使っても勝ったり負けたりを繰り返すものですが、せめて長期的に見た場合の期待値がプラスであるか否かは確かめておきたいものかと思います。

そこで今回は、移動平均線のゴールデンクロス・デッドクロスで売買を行うトレード手法でバックテストを行い、どういう使い方が最適なのかを検証してみたいと思います。

うまく結果が出ない方や、これから使おうとしている方は是非参考にしてみてください。

この記事でわかること
  • 単純移動平均線、加重移動平均線、指数平滑移動平均線のどれを使うべきか
  • パラメータである期間はいくらが最適か
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移動平均線の種類と特徴

念のため、3種類ある移動平均線のそれぞれの特徴をおさらいしていきたいと思います。計算式は以下のサイトを参考にさせていただきました。

EMA(Exponential Moving Average)指数平滑移動平均線 | FX・外貨両替のマネーパートナーズ -外為を誠実に-
EMA(Exponential Moving Average)指数平滑移動平均線について説明しています。

単純移動平均線

これは、N日移動平均線であれば、過去N日の終値の平均値をプロットしたものであり、過去も現在も平等に扱います。N=100の日足で考えれば、100日前の終値と昨日の終値が等価なものとして扱われるというわけです。

さすがに100日前の終値と昨日の終値が等価な訳はないだろうと考えられる一方、多くの人が単純移動平均線を使っているのだからやはりその影響は大きいという考え方も出来るはずで、結局のところバックテストの結果に基づいてその使い勝手を判断するしかないように思います。

加重移動平均線

引用元によれば、加重移動平均線は、過去の各価格データへの加重を「線形的」に減少させて、平均値を計算するようで、10日加重移動平均線の場合は、直近の価格データを10倍し、その前日の価格データを9倍し、10日前の価格データは1倍し、合計を55で割ることで算出されます。

直近の価格を重視するというのはファンダメンタル的には適切なように思います。一方で、データはありませんが、単純移動平均線や指数平滑移動平均線よりもこれを使っている人は少ない印象です。バックテストをしない限りは、一人負けするのか一人勝ちするのかは何ともわかりませんね。

指数平滑移動平均線

こちらも加重移動平均線と同様に、過去の価格を軽視し直近の価格を重視します。違うのは計算式で、指数関数的に過去の価格が軽視されていきます。例えば平滑指数が0.5であった場合、ローソク足が生成されるにつけ、とある時刻の価格の影響は半分、1/4、1/8、…と半分ずつになっていきます。

理論上は過去のすべての価格が計算に含まれることになります。そのため、どこを起点に計算を開始するかによって、表示されるものが変わってしまうという難点があり、使用には注意が必要です(後述するバックテストの結果は、環境によって微妙に変わることが予想されます)。

検証条件

移動平均線の種類としては、単純移動平均線、加重移動平均線、指数平滑移動平均線の3パターンを用意します。

また今回検証では、ゴールデンクロスで買い・デッドクロスで売るを繰り返すトレード手法での検証を行います。これは、移動平均線の基本パフォーマンス(ここからトレード手法を改良するにしても、ベースとしてどれだけ勝てそうか)を計るためのものです。そうすると、各パターンにおいて移動平均線は2つ用意せねばなりません。

移動平均線の期間として5、20、75、200の4パターンを用意し、これらの任意の二つの組み合わせで検証を行うこととします。これらを用意したのは、以下に挙げる理由により、よく使われる設定値だからです。

  • 5:一週間の営業日の数
  • 20:1ヶ月の営業日の数
  • 75:四半期の営業日の数
  • 200:1年間の営業日の数

また今回検証で取り上げる時間足は15分足、1時間足、4時間足の3パターンです。それぞれ前から、スキャルピング、デイトレード、スイングトレードを意識しています。

検証結果

それでは実際に結果を見てみたいと思います。バックテストは以下の条件にて行いました。

通貨ペアUSD/JPY
スプレッド0.3pips(0.3銭)
検証期間2013/1/1 ~ 2020/12/31
ポジション0.1Lot(10000通貨)
資産100万円

単純移動平均線

15分足

表の中の数字はプロフィットファクタを示しています。また括弧内の数字は取引回数です。

  長期
  2075200
短期50.97(14831)1.08(6059)1.13(3520)
201.06(3593)1.13(1918)
751.08(1279)

基本的には短期と長期の差が大きい方がプロフィットファクタも高いという印象でしょうか。しかし後述する加重移動平均線・指数平滑移動平均線に比べれば最大パフォーマンスは劣る感じです。

1時間足

表の見方は15分足同様です。取引回数1000回以下の箇所は統計的信頼性が乏しく、参考にしないほうがいいように思われます。

  長期
  2075200
短期51.09(3458)1.12(1473)1.01(866)
201.15(900)0.88(520)
750.92(338)

あまり傾向のようなものは見受けられず、後述する加重移動平均線・指数平滑移動平均線の方が高いプロフィットファクタが見込めるため、これらを使った方が良さそうです。

4時間足

表の見方は15分足同様です。取引回数が全て1000回以下のため、統計的な信頼性が担保されず、参考には出来ません。

  長期
  2075200
短期51.16(857)0.88(416)0.79(284)
200.98(252)0.64(160)
750.78(84)

加重移動平均線

15分足

表の中の数字はプロフィットファクタを示しています。また括弧内の数字は取引回数です。

  長期
  2075200
短期50.95(18502)1.03(8553)1.09(4877)
201.09(4663)1.15(2649)
751.15(1514)

短期も長期も大きければ大きいほど良いという結果かと思います。ただし15分足に関しては、後述する指数平滑移動平均線の方が高いパフォーマンスを見込めます。

1時間足

表の見方は15分足同様です。取引回数1000回以下の箇所は統計的信頼性が乏しく、参考にしないほうがいいように思われます。

  長期
  2075200
短期51.07(4312)1.13(2064)1.24(1124)
201.11(1164)1.07(680)
750.86(398)

全体的にプロフィットファクタは1を超えてますが、特に短期5・長期200の組み合わせが良いようです。以下がその時の詳細結果です。長い目で見れば右肩上がりです、アップダウンも無くはないですが。これが1時間足を対象にした場合の最大パフォーマンスです。

4時間足

表の見方は15分足同様です。取引回数1000回以下の箇所は統計的信頼性が乏しく、参考にしないほうがいいように思われます。

  長期
  2075200
短期51.13(1098)0.87(554)0.79(348)
200.93(316)0.89(200)
750.75(114)

残ったのは短期5・長期20の組み合わせのみです。それ以外はプロフィットファクタが1以下なので、注目するほどではないと思います。

指数平滑移動平均線

15分足

表の中の数字はプロフィットファクタを示しています。また括弧内の数字は取引回数です。取引回数1000回以下の箇所は統計的信頼性が乏しく、参考にしないほうがいいように思われます。

  長期
  2075200
短期51.07(7143)1.09(3460)1.26(1916)
201.13(1696)1.23(954)
751.01(562)

プロフィットファクタは全て1を超えていて、特に短期5・長期200の結果が良さそうです。その時の結果の詳細を以下に示します。安定的に(直線的に)右肩上がりという訳ではないようです。これが15時間足を対象にした場合の最大パフォーマンスです。

1時間足

表の見方は15分足同様です。取引回数1000回以下の箇所は統計的信頼性が乏しく、参考にしないほうがいいように思われます。

  長期
  2075200
短期51.15(1718)1.17(818)0.91(556)
200.83(458)0.87(294)
750.72(162)

加重平均線の短期5・長期200の組み合わせには劣るようです。

4時間足

表の見方は15分足同様です。取引回数が全て1000回以下のため、統計的な信頼性が担保されず、参考には出来ません。

  長期
  2075200
短期50.81(470)0.84(250)0.88(148)
200.76(134)0.91(70)
751.21(34)

まとめ

本記事では、移動平均線のゴールデンクロス・デッドクロスで勝てるのかをバックテストで検証してみました。以下に結論となる重要なポイントを示します。

結論
  • 15分足の場合は、指数平滑移動平均線を用いるのが良く、パラメータは短期5・長期200の組み合わせが良い
  • 1時間足の場合は、加重移動平均線を用いるのが良く、パラメータは短期5・長期200の組み合わせが良い
  • 4時間足では取引回数の少なさ故に統計的に信頼可能なデータが得られなかった

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。