一目均衡表で勝てるのか?最適な使い方をバックテストで徹底検証

一目均衡表に対するイメージは「とっつきにくそうではあるけれど、使いこなせば勝てるようになりそう」ではないでしょうか。

勿論使いこなして勝てるようになればいいのですが、悲しいことにFXの世界では難しい理屈を理解したからといってそれが必ず勝ちに繋がるとは限りません。むしろ理屈の難しさと勝率は無関係であり、結局のところ統計的に評価するしかその有効性を判断できないのが実態かと思います。

また一目均衡表はその複雑さ故に、エントリーシグナルのレパートリーも多岐にわたります。概ね勝てる手法であることがわかっていたとしても、その中で少しでもパフォーマンスの良いシグナルを選択して使いたいところです。少なくとも、三役好転がベストな戦略なのかどうかは知っておきたいのではないでしょうか。

そこで本記事では、一目均衡表が勝てる手法なのか、また最適な使い方はどんななのかをバックテストを介して検証してみたいと思います。

一目均衡表を使ったトレードの結果を少しでも改善したいという方は、ぜひ参考にしてみてください。

この記事でわかること
  • 一目均衡表を使ったトレードの勝率
  • 最適なエントリーシグナルの組み合わせ

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一目均衡表の使い方とその課題

冒頭で述べた通り、統計的分析に集中するため本記事では細かい計算式などには触れず、あくまでその使い方にのみ着目したいと思います。ここでは使い方の基本をおさらいし、それに伴う課題を定義したいと思います。

エントリーシグナルのレパートリー

一般的に、一目均衡表は以下3つの条件をエントリーシグナルとみなすそうです。尚、全て買いエントリーの場合に関して記載しています。売りエントリーのシグナルはこれらの逆で考えていただければと思います。

①:転換線が基準線を上抜けたとき

下図において赤線が転換線で青線が基準線です。そのため白丸がエントリーシグナルの一例となります。

②:遅行スパンがローソク足を上抜けたとき

下図において緑線が遅行スパンです。そのため白丸がエントリーシグナルの一例となります。下図はリアルタイムのチャートでないため緑線の遅行スパンが右端まで表示されてますが、本来は途中までしか表示がなく、従って過去のローソク足との比較でエントリー判断がなされます。

③:ローソク足が雲を上抜けたとき

下図において2つの破線が先行スパンで、先行スパンに囲まれた縦破線の領域が雲を表します。そのため白丸がエントリーシグナルの一例となります。

インジケータの複雑さとは裏腹に、個別のエントリー条件は至ってシンプルと思います。裁量トレードは言うまでもなく、仮に自動売買するにしてもその実装は比較的簡単に出来るのではないでしょうか。

結局どうすればいいのか?

さて、これら3つエントリーシグナルをどう料理すればいいのでしょうか?

3つの条件が揃った状態を「三役好転」というそうですが、それに絞るのが正でしょうか。実は①だけの方が良い結果を生むという可能性も否定できません。3つの条件が全て揃ったときに強い買いシグナルと見なせるのであれば、2つ揃った場合もエントリーしていいのではないか?とも考えられます。

多くの解説サイトでは、三役好転を推奨する以上にこれらのエントリーシグナルをどう組み合わせて使うのが良いかに関しての議論はほとんどない印象です。

そのため、以下では検証条件を整理した上でどういう組み合わせがベストなのかをバックテストで確認してみたいと思います。

検証条件

検証においては、以下の条件でバックテストを行いたいと思います。

エントリーに関して

3つのエントリーシグナル(①②③)の任意の組み合わせでそれぞれバックテストを行うことにします。任意の組み合わせとは以下の7パターンです(勿論全部使わないパターンは除いてます)。

  • 1つだけ使用する:①、②、③
  • 2つ使用する:①②、①③、②③
  • 3つ使用する(三役好転):①②③

前章で紹介した①②③のエントリーシグナルですが、語尾には全て「上抜けたとき」とあります。これは解釈によっては、「上抜けた瞬間」のみを指す場合もありますが、今回の検証ではそうではなく「上にあるとき」と読むことにします(ただし1つだけ使用する場合は同義です)。

というのも、エントリーシグナルを2つ以上組み合わせて使う場合、「上抜けた瞬間」としてしまうと、そのタイミングが被る確率の低さからポジションを保有する機会がほとんどなくなってしまい、まともな検証が出来ないからです。

おそらく裁量トレードで三役好転を狙う場合も、3つのエントリーシグナルがぴったり同時に発生するタイミングではなく、ある程度タイミングのズレを大目に見て判断するかと思います。この「上にあるとき」という読み方は、それに最も近い動きを実現すると考えられます。

手仕舞いに関して

手仕舞いに関してですが、「上にあるとき」のエントリーシグナルが保たれなくなったときに手仕舞いすることにします。

例えば③のみを使用する場合、雲の上にローソク足があれば買いポジションを維持しますが、ローソク足が雲の中に突入した時点で、この買いポジションを撤収します。

また別の例として①②の2つを使用する場合、転換線が基準線より上にあって、遅行スパンもローソク足の上にあれば買いポジションを維持しますが(AND条件)、転換線が基準線より下にあるか、遅行スパンがローソク足より下にあればこの買いポジションを撤収します(OR条件)。

その他補足

プログラムを書いて検証をするわけですが、エントリーおよび手仕舞いの判断は、ローソク足確定時のみ行うとします。1時間足での検証であれば1時間ごとです。これはチャタリングを防ぐため処置となります。

また、エントリーシグナル②と③ではローソク足とインジケータとの比較をする必要がありますが、ローソク足に関して今回は終値を基準にしたいと思います。

尚、今回検証では時間足として15分足、1時間足、4時間足を対象とします。それぞれ前から、スキャルピング、デイトレード、スイングトレードを意識したものになります。

検証結果

それでは実際に検証結果を見てみたいと思います。バックテストは以下の条件にて行いました。

通貨ペアUSD/JPY
スプレッド0.3pips(0.3銭)
検証期間2013/1/1 ~ 2021/12/31
ポジション0.1Lot(10000通貨)
資産100万円
転換線期間9
基準線期間26
先行スパン期間52

また途中読み飛ばした方のために、エントリーシグナルを以下に再掲します。

  • ①:転換線が基準線より上にあるとき
  • ②:遅行スパンがローソク足の上にあるとき
  • ③:ローソク足が雲を上にあるとき

以下が検証結果です。括弧の左の数字はプロフィットファクタを表していて、1より大きければ期待値はプラス、1未満であれば期待値はマイナスとなります。また括弧の中の数字は取引回数になります。

 15分足1時間足4時間足
0.98(11228)1.13(2627)0.99(645)
0.95(20834)1.12(4778)1.08(1155)
0.99(12028)1.11(2778)0.87(765)
①②0.96(15484)1.14(3579)1.04(874)
①③0.98(10893)1.14(2586)0.93(684)
②③0.97(14876)1.14(3444)0.97(901)
①②③0.98(12130)1.16(2851)0.93(758)

文字色が灰色になっている箇所は、取引回数が1000未満の場合です。個人的に1000回の施行もなかったものは統計的信憑性に欠けると考えてますので、あくまで参考程度と思った方がいいかも知れません。

さて肝心の結果ですが、15分足でのスキャルピングと4時間足でのスイングトレードでは概ね期待値はマイナスです。つまりこれらの時間足で一目均衡表を使っても基本は負け戦ということになります。

一方の1時間足では期待値は常にプラスとなり、中でもエントリーシグナル①②③を使った所謂「三役好転」がベストな戦略という結果となりました。さすがです。

以下が1時間足で三役好転をした場合のバックテストの詳細結果です。比較的綺麗な右肩上がりに見えますが、いかがでしょうか?

まとめ

本記事では、バックテストを介して一目均衡表の勝率および最適な使い方を検証しました。以下に結論となる重要なポイントを示します。

結論
  • 15分足でのスキャルピングや4時間足でのスイングトレードには向いてない
  • 1時間足でのデイトレードには向いている
  • 1時間足ではどんなエントリーシグナルの組み合わせでも期待値はプラスとなるが、中でも三役好転がベストである

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。