「1月効果」というのをご存じでしょうか?株式市場で1月のリターンが他の月のリターンを上回りやすいというアノマリーです。
為替市場でもこれを応用した似た考えがあるようです。例えば、1月の値動きが1年を通した動きに大きな影響を与えるなど。
もしかしたらこれは使えるかも知れないと思い、これらの有効性をネットで調べてみました。しかし使えそうなデータはあまり見つからず、あくまで経験則に過ぎないという議論にとどまっているようです。
そこで本記事では、過去データから1月効果(だけでなく1日効果や1時間効果)の有効性を検証してみたいと思います。
1月効果を使ったトレードを検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
株式市場における1月効果
1月効果とはどういうものかに関しては、こちらにサイトを参考にさせていただきました。
1月効果の発生原因を指摘している箇所を抜粋しますと以下のようになります。
①投資家が12月末にキャピタルロスを確定し、1月に買い戻すことによって節税を実現しようとする「Tax-Loss取引仮説」や②機関投資家が年末に提出する保有資産のレポートをよく見せようとするため、12月末にイメージの悪い株をいったん売るという「Window dressing仮説」などが考えられているが、統一的な見解は得られていない。
「1月効果|ファイナンス用語」『みずほ証券』
これらはFXの場合どれだけ当てはまるのでしょうか?
まず①に関してです。損失を年末に確定させて節税を試みる動きはFXにおいてもありそうです。しかし、株式が主にキャピタルゲインを狙った取引がなされることと比較し、FXは売りも買いもどちらも盛んにおこなわれるため、年末だからチャートが下がるとは言えなさそうです。
次に②ですが、こちらも①同様で、損失のあるポジションを決済するのは空ずしも売りを意味しないため、やはり当てはまらないのかなと思います。
そもそも1月効果は「1月のリターンが他の月のリターンを上回りやすい」ということのようですが、FXの場合売りと買いどちらにポジるかでリターンが変わってくるため、この考え方を応用するには株式と為替の違いを考慮する必要がありそうです。
為替市場における1月効果
FXにおける1月効果の考え方は以下のサイトを参考にさせていただきました。
以下に引用元の1月効果に関する考えを抜粋します。
その年の相場の流れは、1月で決まることが多かったといった意味です。ところで、さらに言えば、そんな1年の相場の流れを考える上で重要な位置付けになりそうな1月相場は、年明け早々の流れと一致することが多かったようです。
「1月の為替を予想する」『吉田恒の為替ウイークリー』 (最終更新 2022年1月4日)
なんとなくですが、1月に値上がりすればその年は値上がりしやすく、1月に値下がりすればその年は値下がりしやすい、と読めるかと思います。
そのため次章の検証では、1月始値から1月終値までの価格差1と、2月始値から12月終値までの価格差2を見てみることにしたいと思います。これら2つの価格差のプラスマイナスで同じであれば、1月効果は支持されますし、逆であればただの迷信となるかも知れません。イメージは以下の通りです。
またせっかくなので1日効果と1時間効果も確認してみたいと思います。
1日効果は、月別に、初日の始値から初日の終値までの価格差1と、二日目の始値から月末の終値までの価格差2を見ます。
1時間効果は、日別に、その日の始値から最初1時間の終値までの価格差1と、次の1時間の始値からその日の終値までの価格差2を見ます。
これらに特に根拠があるわけではありません。何か知見が得られればラッキー程度の位置づけです。
検証結果
それでは実際に結果を見てみたいと思います。検証は以下の条件にて行いました。
通貨ペア | USD/JPY |
検証期間 | 2013/1/1 ~ 2021/12/31 |
1月効果
年 | 価格差1 | 価格差2 |
2013 | 4.837 | 13.696 |
2014 | -2.620 | 17.203 |
2015 | -2.012 | 3.254 |
2016 | 0.820 | -4.357 |
2017 | -4.706 | -0.127 |
2018 | -3.373 | 0.525 |
2019 | -0.801 | -0.224 |
2020 | -0.356 | -5.132 |
2021 | 1.602 | 10.302 |
9年間あるので行数は9です。その内、価格差1と価格差2の符号が一致しているのは5つ(2013年、2017年、2019年、2020年、2021年)なのでほぼ半数です。半分以上とはいえ、1月効果の有効性を認めるほどの関係性はなさそうですが、いかがでしょうか。個人的にはせめて7か8ぐらいは欲しかったです。
1日効果
1年12ヶ月の9年間なので行数は108あります。こちらに記載すると邪魔ですので付録として文末に記しました。
そして価格差1と価格差2の符号が同じだったのは108個中53個でほぼ半分です。1日効果を認めることは難しそうです。
1時間効果
データ数ですが1年365日の9年間から土日や年末年始を除いた2469個あります。さすがに本記事に記載するのは難しいので結果のみとします。
価格差1と価格差2の符号が同じだったのは2469個中1157個でほぼ半分です(47%)。1時間効果も認めることは難しいでしょう。
総合すると、ただの迷信に過ぎない可能性が高そうです。
まとめ
本記事では、1月効果(と1日効果と1時間効果)の有効性を過去データを用いて検証しました。以下に結論となる重要なポイントを示します。
以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。
付録
以下は1日効果の結果です。
年月 | 価格差1 | 価格差2 |
2013/1 | 0.275 | 4.524 |
2013/2 | 0.833 | 0.321 |
2013/3 | 0.417 | 1.466 |
2013/4 | -1.014 | 4.135 |
2013/5 | -0.055 | 3.606 |
2013/6 | -0.558 | -1.366 |
2013/7 | 0.529 | -1.397 |
2013/8 | 0.89 | -1.045 |
2013/9 | 1.008 | -1.241 |
2013/10 | -0.021 | 0.199 |
2013/11 | 0.461 | 3.658 |
2013/12 | 0.371 | 2.044 |
2014/1 | 0.338 | -2.961 |
2014/2 | -0.233 | 0.217 |
2014/3 | -0.352 | 1.498 |
2014/4 | 0.594 | -1.42 |
2014/5 | 0.119 | -0.485 |
2014/6 | 0.345 | -0.857 |
2014/7 | 0.22 | 1.302 |
2014/8 | -0.354 | 1.601 |
2014/9 | 0.069 | 5.45 |
2014/10 | -0.106 | 2.701 |
2014/11 | 0.065 | 5.978 |
2014/12 | -0.826 | 1.564 |
2015/1 | 0.362 | -2.275 |
2015/2 | 0.564 | 2.113 |
2015/3 | 0.063 | 0.112 |
2015/4 | -0.258 | 0.018 |
2015/5 | 0.447 | 4.002 |
2015/6 | 0.4 | -2.103 |
2015/7 | 0.665 | 0.735 |
2015/8 | 0.109 | -2.788 |
2015/9 | -1.885 | 0.514 |
2015/10 | 0.041 | 0.685 |
2015/11 | 0.364 | 2.329 |
2015/12 | -0.24 | -2.645 |
2016/1 | -0.802 | 1.589 |
2016/2 | -0.383 | -8.334 |
2016/3 | 1.272 | -1.42 |
2016/4 | -0.969 | -5.236 |
2016/5 | 0.173 | 4.316 |
2016/6 | -1.185 | -6.289 |
2016/7 | -0.64 | -0.534 |
2016/8 | 0.115 | 1.041 |
2016/9 | -0.177 | -1.827 |
2016/10 | 0.395 | 3.171 |
2016/11 | -0.673 | 10.336 |
2016/12 | -0.369 | 2.904 |
2017/1 | 0.217 | -4.91 |
2017/2 | 0.411 | -0.502 |
2017/3 | 0.968 | -2.375 |
2017/4 | -0.514 | 0.551 |
2017/5 | 0.499 | -1.079 |
2017/6 | 0.609 | 1.074 |
2017/7 | 1.263 | -3.127 |
2017/8 | 0.12 | -0.394 |
2017/9 | 0.293 | 2.945 |
2017/10 | 0.069 | 0.874 |
2017/11 | 0.526 | -1.629 |
2017/12 | -0.374 | -0.066 |
2018/1 | -0.289 | -3.064 |
2018/2 | 0.222 | -2.708 |
2018/3 | -0.435 | 0.046 |
2018/4 | -0.308 | 3.421 |
2018/5 | 0.512 | -1.007 |
2018/6 | 0.697 | 1.23 |
2018/7 | 0.248 | 0.936 |
2018/8 | -0.145 | -0.642 |
2018/9 | 0.032 | 2.618 |
2018/10 | 0.245 | -0.975 |
2018/11 | -0.249 | 0.826 |
2018/12 | -0.05 | -3.96 |
2019/1 | -0.8 | -0.009 |
2019/2 | 0.629 | 1.861 |
2019/3 | 0.559 | -1.05 |
2019/4 | 0.32 | 0.094 |
2019/5 | -0.033 | -3.019 |
2019/6 | -0.239 | -0.169 |
2019/7 | 0.229 | 0.328 |
2019/8 | -1.387 | -1.074 |
2019/9 | 0.108 | 1.859 |
2019/10 | -0.345 | 0.273 |
2019/11 | 0.129 | 1.221 |
2019/12 | -0.578 | -0.332 |
2020/1 | -0.167 | -0.22 |
2020/2 | 0.255 | -0.622 |
2020/3 | 0.897 | -0.855 |
2020/4 | -0.361 | -0.005 |
2020/5 | -0.239 | 0.948 |
2020/6 | -0.101 | 0.344 |
2020/7 | -0.47 | -1.558 |
2020/8 | 0.176 | -0.05 |
2020/9 | 0.033 | -0.553 |
2020/10 | 0.05 | -0.833 |
2020/11 | 0.209 | -0.399 |
2020/12 | 0.007 | -1.025 |
2021/1 | 0.021 | 1.632 |
2021/2 | 0.139 | 1.672 |
2021/3 | 0.193 | 3.946 |
2021/4 | -0.1 | -1.263 |
2021/5 | -0.23 | 0.487 |
2021/6 | -0.093 | 1.622 |
2021/7 | 0.43 | -1.832 |
2021/8 | -0.357 | 0.688 |
2021/9 | 0.03 | 1.252 |
2021/10 | -0.23 | 3.084 |
2021/11 | -0.093 | -0.856 |
2021/12 | -0.373 | 2.337 |