グランビルの法則は合計8つ売買パターンからなり、それらをいかにうまく使いこなすかが収益性向上の鍵となります。
定性的にはどの売買パターンも理にかなっているように感じますが、実際のところ売買パターン次第ではむしろ全体収益の邪魔をしている可能性も否めません。
そこで本記事では、グランビルの法則の8つの売買パターンをそれぞれで分けてトレードし、その収益がどうなるかをバックテストを検証してみることにしました。
グランビルの法則をさらに有効活用したいと考えられている方は、是非参考にしてみてください。
- グランビルの法則の8つの売買パターンの各パターンの勝率
定量化方式
グランビルの法則とはそもそも何かに関しては、以下のサイトを参考にさせていただきました。

エントリーの判断基準の所を抜粋しますと以下の通りです。「株価」は「チャート」にでも読み替えてください。
買い①:移動平均線が上向きになりつつ、株価が下から上に抜けた場合
買い②:移動平均線が上昇中で、株価が上がって移動平均線を上回った後、再度下回った場合
買い③:上昇中の移動平均線に向かって株価が下がって、移動平均線の手前で株価が上がった場合
買い④:株価が移動平均線から大きく下に乖離した場合
売り①:移動平均線が下向きになりつつ、株価が上から下に抜けた場合
売り②:移動平均線が下降中で、株価が下がって移動平均線を下回った後、再度上回った場合
売り③:下降中の移動平均線に向かって株価が上がって、移動平均線の手前で株価が下がった場合
売り④:株価が移動平均線から大きく上に乖離した場合
「グランビルの法則|金融・証券用語解説」『大和証券』
これらの記載は定性的な部分もあり、バックテストで検証するにはもう少し具体的に条件を定義する必要があります。
定量化に関する詳細は過去の記事で紹介していますので、よかったらそちらも参考にしてもらえればと思います。
ここでは、エントリーの条件のところだけを記載したいと思います。
買い①
- 前回移動平均線<現在移動平均線
- 前回終値<前回移動平均線
- 現在移動平均線<現在終値
図にすると以下です。

買い②
- 前回移動平均線<現在移動平均線
- 前回移動平均線<前回終値
- 現在終値<現在移動平均線
図にすると以下です。

買い③
- 前回移動平均線<前回安値
- 前回安値<前前回安値
- 前回安値<現在安値
図にすると以下です。

買い④
- 現在移動平均線乖離率<-閾値
図にすると以下です。

売りの場合は、買いの逆の解釈になります。
売り①
- 現在移動平均線<前回移動平均線
- 前回移動平均線<前回終値
- 現在終値<現在移動平均線
売り②
- 現在移動平均線<前回移動平均線
- 前回終値<前回移動平均線
- 現在移動平均線<現在終値
売り③
- 前回高値<前回移動平均線
- 前前回高値<前回高値
- 現在高値<前回高値
売り④
- 閾値<現在移動平均線乖離率
検証対象
エントリーや手仕舞い、パラメータに関しては以下のように設定したいと思います。
エントリー
本記事のテーマはグランビルの法則の8つの売買パターンをそれぞれで分けた場合のパフォーマンスを検証することです。
従って、検証対象の売買パターンの条件を満たした場合のみエントリーし、それ以外の売買パターンの条件は無視することでこれを実施したいと思います。例えば買い①の検証を実施しているバックテストでは、エントリーは買い①の条件を満たした場合のみとなります。
手仕舞い
一方、買い①であれば売り①のように同じ番号で紐づくのかというとそうではなく、例えば買い①でエントリーしたポジションを保有中に売りの②や③が発生した場合も、グランビルの法則上「売り時」という判断となるため、これは手仕舞いのタイミングということになります。
つまり、どのパターンでエントリーをしていても、それと反対の売買パターンの条件を満たすのであれば、既存のポジションは手仕舞いになるという設定で検証を実施します。
もちろん、買い①の検証をしているときに、例えば売り④のエントリー条件を満たした場合、手仕舞いはあっても売りエントリーはありません。
また買い①の後に更に買い①のように、パターンの重複は今回は許容しないこととします(ポジションは多くても1つ)。
時間足
15分足、1時間足、4時間足でそれぞれバックテストを行いたいと思います。15分足はスキャルピング、1時間足はデイトレード、4時間足はスイングトレードをそれぞれ意識しています。
パラメータ
設定しないといけないパラメータは、移動平均線の期間Nと、保留していた乖離率の閾値です。
今回検証では、移動平均線の期間Nを5、20、75、200の4パターン用意し、乖離率の閾値として±0.75の1パターンを用意します。
本稿では省略しますが、なぜこのような設定値を用意したかに関しては以下2つのリンクをご参考ください。
検証結果
それでは実際に結果を見てみたいと思います。バックテストは以下の条件にて行いました。
通貨ペア | USD/JPY |
スプレッド | 0.3pips(0.3銭) |
検証期間 | 2013/1/1 ~ 2023/12/31 |
ポジション | 0.1Lot(10000通貨) |
資産 | 100万円 |
15分足
括弧の左の数字はプロフィットファクタです。そのため1より大きければ期待値はプラスで、1未満であれば期待値はマイナスです。括弧の中の数字は取引回数です。文字色が灰色の箇所がありますが、これは取引回数が1000回に満たない場合です。取引回数が少ないので統計的信頼性は落ちる可能性が高いです。
N=5 | N=20 | N=75 | N=200 | |
買い① | 1.05(13202) | 1.02(5714) | 1.13(2104) | 1.20(983) |
買い② | 1.04(13907) | 0.97(5275) | 1.07(1840) | 1.25(852) |
買い③ | 1.10(1512) | 1.00(4519) | 1.22(2102) | 1.20(1457) |
買い④ | 0.77(27) | 1.09(108) | 1.15(383) | 0.96(681) |
売り① | 0.97(13137) | 0.98(5648) | 1.00(2095) | 1.12(979) |
売り② | 0.97(13846) | 0.94(5278) | 0.96(1792) | 1.06(857) |
売り③ | 0.85(1320) | 0.93(4313) | 1.04(2148) | 1.06(1507) |
売り④ | 1.05(16) | 1.00(76) | 0.69(300) | 0.74(645) |
結果をみますと、概ね買いの方がプロフィットファクターは高くなるというところでしょうか。特に買い③の結果が時間足によらずいい結果を出しているように思います。
買い①も悪くはないです。取引回数を上げて収益を安定させるためには売りは行わず、買い①と買い③に専念する使い方も悪くないと思います。
1時間足
表の見方は15分足同様です。
N=5 | N=20 | N=75 | N=200 | |
買い① | 1.12(3297) | 1.11(1254) | 0.96(504) | 0.98(285) |
買い② | 1.10(3356) | 0.96(1227) | 0.82(470) | 1.04(252) |
買い③ | 1.56(405) | 1.17(1173) | 1.19(794) | 1.06(620) |
買い④ | 0.96(47) | 0.83(201) | 0.90(398) | 1.31(394) |
売り① | 0.99(3265) | 1.10(1269) | 0.98(499) | 1.43(256) |
売り② | 1.03(3342) | 0.91(1228) | 0.86(466) | 1.08(239) |
売り③ | 1.11(356) | 1.04(1159) | 0.90(761) | 1.07(548) |
売り④ | 0.84(37) | 0.54(167) | 0.86(437) | 0.79(469) |
全体的に取引回数が少なくエビデンスが薄いですが、買い①と買い③は15分足と同様結果はよく出やすいという印象です。
こちらも15分足同様に買いのみに専念する使い方もありかと思います。
4時間足
表の見方は15分足同様です。
N=5 | N=20 | N=75 | N=200 | |
買い① | 1.03(782) | 1.07(334) | 1.14(158) | 0.83(84) |
買い② | 0.97(789) | 0.80(331) | 1.15(147) | 1.05(76) |
買い③ | 0.73(129) | 1.04(388) | 1.22(264) | 0.70(161) |
買い④ | 0.83(85) | 0.79(221) | 1.26(209) | 1.17(138) |
売り① | 0.86(779) | 1.04(321) | 1.24(143) | 0.71(79) |
売り② | 0.70(789) | 0.85(334) | 1.18(140) | 0.93(70) |
売り③ | 0.63(110) | 0.72(351) | 0.98(229) | 0.92(154) |
売り④ | 0.54(69) | 0.87(248) | 0.75(244) | 0.52(140) |
取引回数が全てのケースで少なく、統計的に信頼性のある結果は得られませんでした。
まとめ
本記事では、グランビルの法則の8つの売買パターンをそれぞれで分けてトレードし、その収益がどうなるかをバックテストを検証してみました。以下に結論となる重要なポイントを示します。
- 売りより買いの方が結果は良くなりやすく、買いのみに専念するトレードもあり
- 特に買い①と買い③のプロフィットファクタ(収益)が大きくなりやすい
以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。