以前、以下の記事においてパラボリックで勝てるのかを検証しました。
上記の記事は、エントリーや手仕舞いに関していろいろなパターンを用意し、各パターンの収益性をバックテストで検証したものです。
しかし、パラボリックのパラメータはよく使われる値で固定としています(加速因子の最大値を0.2、加速因子のステップを0.02で固定)。もしかしたらパラメータを変えてみると収益性が高まるかもしれません。
そこで本記事では、パラボリックのパラメータをいろいろ変えてバックテストを実施し、最も収益性の高まるパラメータ(最適設定値)を検証してみようかと思います。
パラボリックのパラメータをどのように設定しようか迷われている方は、ぜひ参考にしてみてください。
- パラボリックのパラメータの最適設定値とその勝率
パラボリックのパラメータ
パラボリックには加速因子の最大値とステップという2つのパラメータがあります。
ローソク足が1つ進むたびにステップだけ増加させ、それをトレンドが継続する限り最大値まで続けていくという流れなのですが…。
文章で説明するよりも以下のサイトがわかりやすいかと思います。

ステップの大きいほうが感度が大きくなります。つまり、トレンドの発生を早く捉えることができるメリットがある一方で、騙しに合う確率も高くなるというわけです。
以下はステップを0.03とした場合のパラボリックの例です。

以下はステップを0.01とした場合のパラボリックの例です。ステップが0.03のときよりも追従が遅い様子がわかるかと思います。

どちらがいいかはバックテストで収益性を比較してみないとわかりません。どれだけ理屈で説明したところでそれは定性的な議論に過ぎず、エビデンスがないからです。
そのため本記事では以下で記載する検証条件に基づいてバックテストを実施し、そのエビデンスを得ることにしたいと思います。
検証条件
検証においては、以下の条件でバックテストを行いました。
エントリーと手仕舞い
SARとチャートが交差するタイミングでドテンを繰り返すトレードを対象に検証を実施します。
下図が一例です。黄色の丸で買い、緑の丸で売ることを繰り返すイメージです。この例はレンジ相場なのであまりいい結果になりそうではありませんが。

実際の裁量トレードにおいて、パラボリックだけでトレードを行ったり、常にドテンでエントリーや手仕舞いをしたりすることはないと思いかと思いますが、この条件での検証を行うことでインジケータそのものの性能を確かめることが可能になると考えられます。
パラメータの検証範囲
よく使われるのが最大値0.2、ステップ0.02という設定値です。
ではそれ以外に何かあるのかとネットを漁りましたが、ほとんど情報が出てきません。
そのため今回はエイヤで決めることにしました。
- 加速因子の最大値 :0.1、0.2、0.3の3パターン
- 加速因子のステップ:0.01、0.02、0.03の3パターン
つまり全組み合わせ9パターンで検証をすることになります。
その他補足
時間足は15分足、1時間足、4時間足を対象とします。それぞれ前から、スキャルピング、デイトレード、スイングトレードを意識したものになります。
検証結果
それでは実際に検証結果を見てみたいと思います。バックテストは以下の条件にて行いました。
通貨ペア | USD/JPY |
スプレッド | 0.3pips(0.3銭) |
検証期間 | 2013/1/1 ~ 2023/12/31 |
ポジション | 0.1Lot(10000通貨) |
資産 | 100万円 |
15分足
以下が検証結果です。括弧の左の数字はプロフィットファクタを表していて、1より大きければ期待値はプラス、1未満であれば期待値はマイナスとなります。また括弧の中の数字は取引回数になります。
加速因子の最大値 | ||||
0.1 | 0.2 | 0.3 | ||
加速因子のステップ | 0.01 | 1.00(13837) | 1.00(14067) | 1.00(14067) |
0.02 | 0.97(20816) | 0.95(12709) | 0.96(9921) | |
0.03 | 0.98(23852) | 0.96(17688) | 0.97(14771) |
どの組み合わせでもプロフィットファクタは1以下なので、スキャルピングでは基本パラボリックを使うのは推奨されないということでしょうか。ステップが0.02以上と大きくなるとプロフィットファクタは1を下回るため、スプレッド負けしている可能性が高そうです。
1時間足
表の見方は15分足と同様です。
加速因子の最大値 | ||||
0.1 | 0.2 | 0.3 | ||
加速因子のステップ | 0.01 | 1.14(3411) | 1.18(3491) | 1.18(3491) |
0.02 | 1.08(5081) | 1.05(5627) | 1.05(5655) | |
0.03 | 1.08(5713) | 1.03(7081) | 1.03(7265) |
プロフィットファクタはどの組み合わせでも1より大きく、デイトレードにおいてはパラボリックの使用は推奨されるかと思います。特にステップが0.01のときのパフォーマンスがよいようです。
4時間足
表の見方は15分足と同様です。
文字色が灰色になっている箇所は、取引回数が1000未満の場合です。個人的には1000回の施行もなかったものは統計的信憑性に欠けると考えてますので、あくまで参考程度と思った方がいいかも知れません。
加速因子の最大値 | ||||
0.1 | 0.2 | 0.3 | ||
加速因子のステップ | 0.01 | 1.00(908) | 0.95(942) | 0.95(942) |
0.02 | 1.16(1305) | 1.12(1466) | 1.14(1470) | |
0.03 | 1.21(1423) | 1.16(1824) | 1.14(1876) |
ステップが0.02以上のときにプロフィットファクタが1を超えるようです。また最大値は0.1のときが最適となります。
最も結果の良かったステップ0.03、最大値0.1のときのバックテストの詳細を以下に示します。取引回数が1423回と少ないのが心細いですが、比較的順調に右肩上がりの資産曲線となっているのではないでしょうか。

まとめ
本記事では、バックテストを介してパラボリックの最適設定値を検証しました。以下に結論となる重要なポイントを示します。
- 15分足でのスキャルピングであれば、加速因子の最大値は何でもよく、加速因子のステップは0.01がよい
- 1時間足でのデイトレードであれば、加速因子の最大値は0.2(あるいは0.3)、加速因子のステップは0.01がよい
- 4時間足でのスイングトレードであれば、加速因子の最大値は0.1、加速因子のステップは0.03がよい
以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。