ボリンジャーバンドを用いたバンドウォークなど、トレンドフォロー型のトレードをしていてよく騙しに合うなんてことはないでしょうか?
トレンドフォロー型のトレードは、明確な相場転換のサインがなければトレンドは継続するという「ダウ理論」を前提にして行うものかと思います。「理論」という名がついてますが、為替相場は物理法則が成り立つ訳ではなく、むしろこれは「仮説」と呼ぶにふさわしいものです。つまりこれだけだと「トレンドが継続しやすい」という前提そのものの信憑性が釈然としないわけです。
そこで今回は、トレンドが本当に継続する可能性が高いのかを過去データより統計的に検証してみたいと思います。
トレンドフォロー型のトレードを使っている方、あるいは使おうとしている方はぜひ参考にしてみてください。
問題設定
「トレンドが形成されたとはどういう状況か?」
「トレンドが継続するとはどういう状態か?」
一般的にこれら2つの概念に客観的な線引きはないと思われます。従って検証に際してはこれら2つの概念に納得感のある定義付けを行う必要があります。
以下では、これらを1つずつ見ていきたいと思います。
何をもってトレンドの形成とするか?
今回は、FXにおけるトレンドの判断として最もよく使われる指標であろうADXを使おうと思います。
ADXとはトレンドの強弱を表すインジケータであり、一般的にADXラインが閾値25~30を超えるとトレンドが強い状態を表していると見なされます。
下図がADXのイメージです。点線がADX30のラインで、この値以下の時はトレンドというトレンドは見られませんが、30のラインを超えたあたりから上昇トレンドを形成していることがわかるかと思います。
一般的にADXが25から30を超えたところでトレンド形成と判断されることが多いようです。今回は、閾値として25と30の2パターンを用意してそれぞれ検証することにしたいと思います。
ただし、ADXだけでは上昇トレンドか下落トレンドかはわからないため、トレンド形成時のローソク足の陰陽によってトレンドの方向性を判断することとします。
何をもってトレンドが継続していると見なすか?
勿論、上昇トレンド形成後にローソク足が上方向に延びれば、トレンド継続と判断されます。逆もまた然りです。
ですが別の議題として、トレンド形成後のローソク足をどこまで追跡してこれを判断すべきかという問題があります。トレンド形成中であって、個々のローソク足は陽線だったり陰線だったりするものです。
これに関してはこうすべきという客観的な指標がないと思われますので、今回はローソク足1本から5本までの5パターンを用意し、それぞれのパターン別に検証を行うことにしたいと思います。
例えばローソク足5本のパターンの場合、トレンド形成時の始値が100JPY/USDで、その5本後のローソク足の終値が101JPY/USDであれば、1JPY/USD上昇したことになるため、仮にトレンド形成時に上昇相場ならばトレンド継続と判断され、そうでなければトレンドは継続しなかったと判断されます。
ちなみに「ADXが閾値以下となったときにトレンド終了と判定し、そのときまでのローソク足を追跡すればいいのでは?」と思われたかも知れません。今後追加検証する可能性はありますが、今回はやめました。というのも閾値近辺でチャタリングしている事象が多く見られたためです。
検証のイメージ
以上をまとめた具体的な検証のイメージは以下の図のようになります。ADXの閾値を25とし、ローソク足1本だけ追跡する場合を想定します。
下図のようにローソク足確定時にADXが25を超えた場合、トレンドが形成されたとみなします。下図の場合、陽線のため上昇トレンドとの判定です。
そして次のローソク足が確定したとき、そのローソク足の陰陽を確認します。下図の場合、陰線のためトレンド継続ならずという判定結果です。
これを検証期間終了まで続け、トレンド継続確率=トレンドが継続した総数÷トレンドを形成した総数を計算することで、トレンドが継続する可能性の高さを算出します。
尚、今回検証では時間足として15分足、1時間足、4時間足の3パターンを用意します。それぞれ前から、スキャルピング、デイトレード、スイングトレードを意識したものになります。
検証結果
それでは実際に結果を見てみたいと思います。検証は以下の条件にて行いました。
通貨ペア | USD/JPY |
検証期間 | 2013/1/1 ~ 2021/12/31 |
ADX期間 | 14 |
15分足
括弧の外の数字は、トレンド形成後にローソク足がトレンドと同じ方向に進んだ確率を示します。また括弧の中の数字はトレンドが形成された総数です。ただしどちらも同時線の場合はノーカンとしています。
ADX閾値25 | ADX閾値30 | |
ローソク足1本 | 46.9%(8098) | 46.5%(7229) |
ローソク足2本 | 46.5%(8376) | 47.1%(7476) |
ローソク足3本 | 46.6%(8468) | 48.0%(7542) |
ローソク足4本 | 46.3%(8444) | 47.1%(7535) |
ローソク足5本 | 46.4%(8246) | 47.2%(7454) |
結果を見ると、全ての組み合わせで確率は50%を下回ります。つまり15分足では、トレンドは継続しない確率の方が高いという結論かと思います。
逆張りのトレードはスキャルピングなど短い時間足で行われる場合が多いような印象ですが、今回結果を受けると理に適ったものということが出来そうです。
1時間足
表の見方は15分足と同様です。
ADX閾値25 | ADX閾値30 | |
ローソク足1本 | 47.9%(2115) | 45.3%(1941) |
ローソク足2本 | 46.0%(2137) | 45.1%(1978) |
ローソク足3本 | 47.8%(2135) | 45.5%(1994) |
ローソク足4本 | 48.0%(2112) | 46.4%(1978) |
ローソク足5本 | 50.0%(2038) | 47.1%(1955) |
こちらもほぼ50%を下回ります。つまり1時間足では概ねトレンドは継続しない確率の方が高いということかと思います。
15分足との比較ですと、ADX閾値25の場合はトレンドが継続する確率が高まる傾向にあるようです。一方ADX閾値30の場合は逆に確率が低くなる傾向にあります。トレンド形成の判断をあんまり待ちすぎると反対方向にチャートが進んでしまう可能性が高くなるということの表れかと思います。
4時間足
表の見方は15分足と同様です。
ADX閾値25 | ADX閾値30 | |
ローソク足1本 | 49.5%(523) | 46.8%(519) |
ローソク足2本 | 50.4%(520) | 49.1%(521) |
ローソク足3本 | 52.9%(522) | 47.6%(521) |
ローソク足4本 | 50.2%(516) | 48.3%(507) |
ローソク足5本 | 52.8%(504) | 48.2%(502) |
若干傾向が変わったようです。ADX閾値25だとトレンドが継続する可能性の方が高く、ADX閾値30だとトレンドが継続しない方が高いようです。つまり、4時間足でトレンドフォロー型のトレードをする場合、トレンド形成の判断は多少早いぐらいがいいということかと考えられます。
トレンドフォロー型のトレードはスイングトレードなど比較的長い時間足で行うことが多い印象ですが、今回結果よりあながち間違いではないということになるかと思います。
まとめ
本記事では、トレンドが本当に継続する可能性が高いのかを過去データを用いて統計的に検証しました。以下に結論となる重要なポイントを示します。
以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。