以前、包み足が相場転換のシグナルとして有効かをバックテストで検証しました。結果は惨憺たるものでしたが。
今回は、同様の検証をはらみ線に関して行いたいと思います。つまり相場転換のサインと言われるはらみ線が出た時に逆張りを行うトレード手法で勝てるのか?を検証します。
特に条件を設けず、愚直にはらみ線が出た場合に逆張りを行うトレード手法の検証から、裁量トレードと状況がかなり近くなるよう特殊な条件を追加した場合のトレード手法の検証まで、本記事では幅広くカバーしたいと思います。
自動売買であれ裁量トレードであれ、はらみ線で逆張りを狙おうとしている方はぜひ参考にしてみてください。
検証条件
まず、はらみ線に関しての基本事項をおさらいし、その後検証で用いるエントリーと手仕舞いの条件を説明したいと思います。
基本のおさらい
「はらみ線とはそもそも何か」に関しては、例えば以下のサイトを参考にさせていただきました。
2本目ローソク足の値動きが、1本目ローソク足の始値から終値の範囲内の動きに終始した足型をはらみ線と呼ぶようです。
上記のサイトでは、ローソク足の陰陽の種類は特に問わないようですが、他のサイトを漁ってみますと、陰線→陽線か陽線→陰線のはらみ線を相場転換のシグナルと見なす記載が多数派でした。そのため、本記事でもこれを踏襲したいと思います。
「相場転換のシグナル」であるため、基本の使い方は逆張りかと思います。はらみ線の出現と同時に例えば逆張りのトレーリングを設定し、期待値の意味で勝てばはらみ線は有効、そうでなければオカルトということになるかと思います。
これをバックテストで検証するため、エントリーと手仕舞いのパターンの詳細をそれぞれ以下のように定義したいと思います。
エントリーパターン
まずエントリーのパターンです。おそらく裁量トレードをされている方にとって、エントリー1の条件で常にエントリーすることはあり得ないと思われます。裁量トレーダーにとっても参考となるよう、より属人的な判断に似せたものがエントリー4となります。
エントリー1:追加条件なし
はらみ線の条件さえ満たせばエントリーです。つまり以下3つのみを条件とします。
- 1本目ローソク足安値<2本目ローソク足安値
- 2本目ローソク足高値<1本目ローソク足高値
- 1本目と2本目で陰陽が異なる
勿論、陰線→陽線であれば買いでエントリーし、陽線→陰線であれば売りエントリーです。
エントリー2:トレンド発生中のみエントリー
上記引用に「上昇相場で」との条件があるため、売りエントリーは上昇相場中であること、買いエントリーは下落相場中であることを条件に加えたいと思います。
そして具体的なトレンドの判断基準として、今回は移動平均線を使いたいと思います。例えば、上昇相場中であることは、以下2つの条件を追加することになります(もしかしたら1だけでいいかも)。
- 移動平均線<1本目ローソク足の安値
- 移動平均線<2本目ローソク足の安値
勿論、下落相場中はこの逆になります。
エントリー3:ローソク足がある程度大きい場合のみエントリー
エントリー1だけだと、小さいローソク足が連続する場合でも頻繁にエントリーの条件を満たしてしまうことになります。相場転換を狙うぐらいですので、少なくとも裁量トレードをしている際は、ある程度大きいローソク足での観測を意識しているはずです。
そのためここでは、ローソク足がある程度大きいことを条件に加えたいと思います。ローソク足の大きさを表す指標にATRがありますので、条件は以下のようになると考えられます。
- ATR<1本目ローソク足の大きさ(=高値-安値)
エントリー4:上記のエントリー2と3の併用
エントリー2と3の条件をどちらも加えます。そのため、「トレンド発生中に、ある程度ローソク足の大きさがあるはらみ線が発生すればエントリーする」となります。
逆に言えば、トレンドも何もない揉みくちゃ時のエントリーや、小さいローソク足が連続する状況など、裁量トレードではまずしないようなタイミングでのエントリーは避けられることになります。
手仕舞いパターン
次に手仕舞いのパターンです。相場転換を狙うならばトレーリングが有効のはずです。手仕舞い2と3はトレーリングをするもので、その違いはトレール幅にあります。
手仕舞い1:1本目ローソク足の高値・安値までの幅でストップ・リミット
エントリー時、売りの場合は1本目ローソク足の高値までの幅をストップに、安値までの幅をリミットにし、買いの場合は1本目ローソク足の安値までの幅をストップに、高値までの幅をリミットにします。
はらみ線が逆張りシグナルとして正しいのであれば、はらんだ方のローソク足の先ぐらいには到達するだろうという期待を込めています。
手仕舞い2:1本目ローソク足の高値・安値までの幅でトレーリング
手仕舞い1だと「ローソク足1本だけを見るのは判断が早い、その後の経過も見るべき」とのご意見がありそうです。
手仕舞い2ではもう少し長期的な経過を見るため、リミットは敢えて置かず、ストップ幅でトレーリングをすることにします。
手仕舞い3:3ATRでトレーリング
手仕舞い2よりは幅を大きく見てます。おそらく裁量トレードをされる方にとって、手仕舞い1や2は幅が狭すぎると思われます。現実により即したトレードを行うのがこの手仕舞い3です。
ATRを基準にしてますので、時間足や相場状況の違いを吸収したトレール幅の設定を可能とします。
以上が今回用意したエントリーと手仕舞いの説明となります。
検証結果
それでは実際に結果を見てみたいと思います。バックテストは以下の条件にて行いました。また、今回検証では時間足として15分足、1時間足、4時間足を対象とします。それぞれ前から、スキャルピング、デイトレード、スイングトレードを意識したものになります。
通貨ペア | USD/JPY |
スプレッド | 0.3pips(0.3銭) |
検証期間 | 2013/1/1 ~ 2021/12/31 |
ポジション | 0.1Lot(10000通貨) |
資産 | 100万円 |
移動平均線期間 | 20 |
ATR期間 | 14 |
15分足
括弧の左の数字はプロフィットファクタです。そのため1より大きければ期待値はプラスで、1未満であれば期待値はマイナスです。括弧の中の数字は取引回数です。
手仕舞い1 | 手仕舞い2 | 手仕舞い3 | |
エントリー1 | 0.87(11469) | 0.86(10915) | 0.98(4992) |
エントリー2 | 0.94(5497) | 0.85(5352) | 0.89(3483) |
エントリー3 | 0.87(9143) | 0.84(8751) | 0.99(4792) |
エントリー4 | 0.94(4468) | 0.84(4366) | 0.89(3137) |
プロフィットファクタは全て1以下です。15分足などでのスキャルピングでは、はらみ線は当てにならないと思われます。
1時間足
表の見方は15分足と同様です。文字色が灰色の箇所がありますが、これは取引回数が1000回に満たない場合です。個人的には1000回に満たない結果は信用しない方がいいと考えてます。
手仕舞い1 | 手仕舞い2 | 手仕舞い3 | |
エントリー1 | 0.98(4204) | 1.03(3906) | 1.11(1531) |
エントリー2 | 0.88(1987) | 0.97(1904) | 1.13(1083) |
エントリー3 | 0.98(3067) | 0.97(2888) | 1.07(1434) |
エントリー4 | 0.86(1444) | 0.97(1373) | 0.99(933) |
手仕舞い3だと概ねプロフィットファクタは1を超えるようです。1時間足でトレーリングする場合、トレール幅は大きめに取った方が良いということでしょうか。
以下は最もプロフィットファクタの大きかったエントリー1・手仕舞い3の組み合わせにおけるバックテストの詳細です。長期的に見れば右肩上がりです。
4時間足
表の見方は15分足と同様です。
手仕舞い1 | 手仕舞い2 | 手仕舞い3 | |
エントリー1 | 0.85(1314) | 1.01(1283) | 1.26(440) |
エントリー2 | 0.87(616) | 1.00(612) | 1.44(311) |
エントリー3 | 0.85(974) | 0.97(947) | 1.32(402) |
エントリー4 | 0.93(427) | 1.00(424) | 1.49(263) |
ほとんど取引回数が1000回に満たないため、4時間足などのスイングトレードにおいて、はらみ線の出現は頻度が少なく、統計的に根拠のあるトレードは実施が難しいということになるかと思います。
参考程度ですが、エントリー1・手仕舞い2のバックテストの詳細を以下に載せておきます。プロフィットファクタ1超えとはいえ、上下動が激しく使うのが躊躇われます。
まとめ
本記事では、はらみ線が本当に相場転換のシグナルとなるのかをバックテストを用いて検証しました。以下に結論となる重要なポイントを示します。
以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。