連敗確率の正しい計算法とは?単に累乗するだけでは不十分な理由

コイントスを考えます。50%で表が出て、50%で裏が出る。このとき2回連続表が出る確率は、50%×50%=25%です。

FXで考えます。損切確率が50%、利確確率が50%。このとき2回連続損切する確率は50%×50%=25%です。

では最大ドローダウン2連敗を見越した資金管理は、この25%を想定していればいいのでしょうか?実はこれではかなり不十分です。

例えば6連敗で破産する場合を想定したとき、(1/2)6=1.56%でそれが起こると考えてはいけないということです。

本記事では連敗確率の正しい計算法と、なぜ負ける確率を累乗するだけでは不十分なのかを解説したいと思います。

この記事でわかること
  • なぜ負ける確率の累乗では不十分なのか
  • 正しい連敗確率の計算法
  • 連敗確率の早見表

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問題提起

私は海外のカジノに行った際、よくルーレットをやります。0や00を除けば、数字は1から36まであるので、偶数と奇数が出る確率はそれぞれ50%です(ディーラーがイカサマしていなければ)。この場合、6回連続で奇数が出る確率は(1/2)6で計算すると約1.56%となります。ですが体感では、6回連続で奇数が出るような事象はこの1.56%よりも高い確率で目にしている気がします。

皆様もFXをしていて、事前に計算していたより高い確率で連敗に遭遇しているように感じたことはないでしょうか?私が思うに、その感覚は正しいです。

勿論、6回連続で奇数が出る確率は1.56%で間違いありません。しかし他の問題として、この1.56%という確率には6回「以上」負ける確率が含まれていないということが挙げられます。

例えば、計7回ルーレットを回すことを考えましょう。ただし0と00はなく、常に偶数に賭け続けるものとします。6回連続で負けるパターンは、以下のように最初に1回勝った後6回連続負けるパターンと、6回連続で負けた後に最後だけ勝つパターンの2パターンがあります。

よって、6回連続負ける確率は、2×(1/2)7=1.56%とここまでは変わりません。

ただしこれには7回連続の負けが含まれておらず、この確率(1/2)7=0.78%を含めると、6回以上連続で負ける確率は約2.34%と1%弱上がります。

では計8回ルーレットを回す場合はどうか?導出は省略しますが、確率は約3.13%となり更に上がります。

もうわかったかと思いますが、単に負ける確率を累乗する計算は、その回数しかトレードしない場合か、その回数以上の負けを想定しない場合にしか通用しないということです。

連敗確率を見積もるのは、ドローダウンの時でも資金に余裕を持たせるためです。ですので、ぴったり何回負けるかではなく、何回以上負けるかで考えなければ意味がないわけです。

正しい計算法

それでは本題の正しい計算法に関して説明したいと思います。まず前提として、以下のように文字を定義したいと思います。

N総トレード数
M連敗回数
a負ける確率

導出は漸化式にて行います。多分それしか方法がないと思います。

まず総トレード数Nにおいて、M回以上連敗する確率をP(N, M)と表すことにします。

ここでN回目のトレードまでにM回以上の連敗が現れるパターンは、以下の2パターンに分けられます。

(1) N-1回目までに既にM回以上の連敗を経験している
この場合の確率は、言うまでもなくP(N-1, M)で表されます。

(2) N回目でちょうどM回の連敗を経験する
この場合はやや複雑ですが、N-M-1回目まではM回の連敗を経験しておらず、更に次のトレードで1回勝ち、続くそれ以降のM回のトレードにおいて連敗を経験することに該当するため、その確率は(1-P(N-M-1, M))×(1-a)×aMとなります。

これら2つの確率を足したものがP(N, M)であるため、最終的に導かれる漸化式は以下となります。

P(N, M)=P(N-1, M)+(1-P(N-M-1, M))×(1-a)×aM

これを解いていけばいいわけですが、漸化式なので境界条件が必要ですね。

まずN<Mの場合、すなわち連敗する回数より総トレード回数が少ない場合ですが、これはあり得ないため当然P(N, M)=0となります。

またN=Mの場合は総トレード回数と同じ回数だけ連敗していることになるため、P(N, M)=aMと見なされます。

後はこれらを当てはめていって、エクセルなりプログラムなりでP(N, M)を計算していけば、M回以上連敗する確率が算出できます。

早見表

エクセルとかプログラミングとかよくわからないという方のために、早見表を作りました。

FXに限らず、偶然性を伴うあらゆる事象に通用します。というかFXの場合、負ける確率がはっきりわからないため、それ以外の例えばカジノだとかの方が当てはまりはいいかも知れません。

負ける確率50%の場合

少数点第2位で四捨五入してますので、100.0%のところは絶対というわけではなく、ほぼ100%という意味です。例えば年間100回トレードをするとして、6回連続で負けたら破産というケースを考えると、その確率は早見表より54.6%とかなり高いです。上述したように、多くのサイトで説明されている(1/2)6=1.56%とは程遠い確率であることがおわかり頂けるかと思います。

 連敗回数
総トレード回数5回以上6回以上7回以上8回以上9回以上10回以上
1010.9%4.7%2.0%0.8%0.3%0.1%
3036.8%19.2%9.5%4.6%2.2%1.1%
5055.2%31.5%16.5%8.4%4.1%2.0%
10081.0%54.6%31.8%17.0%8.8%4.4%
30099.4%91.3%69.5%44.2%25.1%13.4%
500100.0%98.3%86.4%62.5%38.5%21.5%
1000100.0%100.0%98.2%86.1%62.4%38.5%

負ける確率70%の場合

損小利大でリスクリワードを1:3にしていれば、負ける確率は概ね70%に近くなります。スイングトレードをしているため、年間トレード回数が30回と少なめだったとしても、7連敗以上する確率は50%を超えています。むしろ7連敗以上に遭遇しない方が珍しいことになります。

 連敗回数
総トレード回数5回以上6回以上7回以上8回以上9回以上10回以上
1042.9%25.9%15.6%9.2%5.2%2.8%
3087.5%71.9%54.8%39.7%27.9%19.2%
5097.3%89.3%75.8%60.1%45.3%33.0%
10099.9%99.0%94.9%85.8%72.6%58.0%
300100.0%100.0%100.0%99.8%98.3%93.5%
500100.0%100.0%100.0%100.0%99.9%99.0%
1000100.0%100.0%100.0%100.0%100.0%100.0%

負ける確率30%の場合

リスクリワードを3:1にしていれば、負ける確率は概ね30%になります。負ける確率50%の時より随分小さくなったことがわかります。

 連敗回数
総トレード回数5回以上6回以上7回以上8回以上9回以上10回以上
101.1%0.3%0.1%0.0%0.0%0.0%
304.4%1.3%0.4%0.1%0.0%0.0%
507.7%2.3%0.7%0.2%0.1%0.0%
10015.3%4.8%1.4%0.4%0.1%0.0%
30039.9%14.0%4.4%1.3%0.4%0.1%
50057.4%22.4%7.3%2.2%0.7%0.2%
100081.9%39.9%14.1%4.5%1.4%0.4%

まとめ

本記事では、連敗確率の正しい計算法を紹介しました。以下に結論となる重要なポイントを示します。

結論
  • 負ける確率を単に累乗しただけの連敗確率は、その回数だけトレードしない場合にしか通用しない
  • 資金管理を目的に連敗確率を計算するのであれば、その回数「以上」の連敗確率も考慮する必要がある
  • 総トレード数をN、連敗回数をM、負ける確率をaとすれば、M連敗以上する確率はP(N, M)=P(N-1, M)+(1-P(N-M-1, M))×(1-a)×aMの漸化式を解くことで得られる
  • 勝率50%のトレードを100回行った場合、6連敗以上する確率は漸化式より54.6%となり、6回しかトレードしない場合の(1/2)6=1.56%よりかなり高いことがわかる

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。