私は海外に行く際、支払いの殆どをクレジットカードで済ませており、外貨の両替は最小限に留めることが多いです。それでも非常用の現金も含め数万~数十万円分の両替は事前に行っています。
そして先日ふと思いました。「外貨を両替するのにお得な曜日ってあるのか?」。株式の場合ですと何曜日に買うのがベストだとか色々情報が出て来るわけですが、外為に関しては調べても目ぼしい情報がほとんど出て来ません。
そこで今回、外貨を両替するのは何曜日がベストなのかを過去データから検証してみることにしました。もし曜日別に大きな違いがあることがわかればラッキーです。
似たような疑問を持たれた方だけでなく、普段のFXトレードにおいて曜日別の特徴が知りたいという方も含めて、ぜひ参考にしていただければと思います。
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基本のおさらいと検証条件
本章では、両替レートに関する基本事項の説明から始まり、どうやって検証を行うのかまでを概観したいと思います。
両替レートはどうやって決まる?
そもそも両替レートがどうやって決まるのかに関して、基本のおさらいです。
一言に両替レートといっても、TTSという日本円から外貨に換えるレートと、TTBという外貨から日本円に換えるレートとの二つがあります。これらは仲値と呼ばれる基準値から適当な値幅を空けて設定されます。
ここで仲値とは、日本時間9時55分のインターバンク市場のレート(おそらく皆様がFXでトレードしている時に見ているレート)を参考に各金融機関・両替所が決定するものです。
例えば、仲値が100円/ドルで値幅が1円/ドルとすれば、TTSが101円/ドルになり、TTBが99円/ドルになります。この場合、日本円で1万円を交換すれば99ドル取得できることになります。解釈の一つとして、仮に仲値で交換できれば100ドル取得することが出来たため、1ドル(あるいは100円)が手数料としてかかったということになります。イメージにすると下図のようになります。
外貨の両替におけるTTSとTTBの価格差は、概念的にはFXトレードにおけるビッドアスクスプレッドに相当します。両替所におけるTTSおよびTTBは1日中固定されるのが一般的ですが、その後のインターバンク市場の値動きや両替に応じる量の偏りによって損をすることがないように、TTSとTTBの価格差をビッドアスクスプレッドよりも大きく設定します。これにより両替所の人件費や設備費などを考慮しても、事業として成り立たせることが可能になるわけです(といってもあまりにもTTSとTTBの価格差が大きいとお客さんが来なくなるため、どこでバランスさせるのかが難しい問題ではありますが)。
どんな検証をするか?
調べてみると概ね傾向が掴めるかと思いますが、仲値はどこも似たような値を設定しています。また仲値からTTSやTTBまでの値幅は、両替所を固定すると毎日似たような値です。そのため、両替するのは何曜日がいいか?を検討するには、どこかから適当に仲値を取得し、それを単純に日別に比較すればいいということになります。
そこで今回の検証では、まず仲値の週平均を算出し、次に各日の仲値とその平均との差分を算出し、最後にその差分を曜日別に平均することで、曜日別の割安感・割高感を見ることにしたいと思います。
例えば、とある1週間に着目した時、仲値が以下の通りだったとします。
- 月曜日:101円/ドル
- 火曜日:103円/ドル
- 水曜日:102円/ドル
- 木曜日:104円/ドル
- 金曜日:101円/ドル
この1週間の仲値の平均は102.2円/ドルですので、この平均値との差分が以下の通りとなります。
- 月曜日:-1.2円/ドル
- 火曜日:0.8円/ドル
- 水曜日:-0.2円/ドル
- 木曜日:1.8円/ドル
- 金曜日:-1.2円/ドル
このような差分の計算を他の週でも行い、曜日別の差分の平均を算出します。これによって1週間の内、どの曜日で両替するのがお得かがわかることになるわけです。上記の1週間だけを抜粋しますと、月曜日か金曜日に両替するのがお得ということになります。
それでは実際に過去データを使ってこの検証を行いたいと思います。
検証結果
仲値の過去データは、以下のサイトのものを使わせていただきました。
検証対象とした通貨ペアは、USD/JPY、GBP/JPY、EUR/JPYの3つです。
データは2002年4月1日から2023年12月29日までのを使用しますが、今回は2002年から2023年までを対象とする「長期の検証」と、2023年のみの対象とする「短期の検証」の2つのパターンで検証をしたいと思います。
どちらが正しいかの判断は難しいのですが、長期の検証は平均を取る期間が長い分、頑健性の高い結果として期待でき、短期の検証は直近の過去を対象としている分、昨今の社会情勢をより反映した結果として期待できるというのが定性的解釈かと思います。
長期の検証:2002年4月1日~2023年12月29日
表中の値は、各日の仲値と仲値の週平均との差分を曜日別に平均化したものです。
USD/JPY | GBP/JPY | EUR/JPY | |
月曜日 | -0.02661 | -0.07130 | -0.05443 |
火曜日 | -0.02290 | -0.08885 | -0.06159 |
水曜日 | -0.00259 | -0.03443 | -0.01514 |
木曜日 | 0.01423 | 0.06366 | 0.04192 |
金曜日 | 0.03536 | 0.12417 | 0.08407 |
差分は「各日の仲値-仲値の週平均」で計算してますので、プラスの曜日は週平均より円安、マイナスの曜日は週平均より円高となります。つまり円を外貨に換える場合、マイナス方向に値が大きい表中の赤字が最も望ましいことになります。また海外から帰って来て外貨を円に換える場合、プラス方向に値が大きい表中の青字が最も望ましいことになります。
個人的には結構面白い結果と思っています。少なくとも今回対象とした3つの通貨ペアでは、月曜日・火曜日・水曜日は円高で、木曜日・金曜日が円安ということが共通しているようです。理由はわかりませんが、こうなると他の通貨ペアでも同様の傾向があることが期待されます。
さて、肝心なのは結局このような曜日別の割安・割高の違いが両替する際どれだけの影響力を持つか、ということです。ここでは最大ケース(最も得をした場合)で考えてみたいと思います。
本来の方向と逆になりますが、話を分かりやすくするため米ドルを日本円に交換する場合を考えます。概ねTTBがA円/ドルだとして、1000ドルに両替する場合を考えてみます。レートにも因りますが大体10万円相当と思います。もし月曜日に両替をしていれば、TTBはA-0.02290円/ドルのため、取得できる日本円は1000×(A-0.02290)円となります。一方、金曜日に両替していれば、TTBはA+0.03536円/ドルのため、取得できる日本円は1000×(A+0.03536)円です。そうすると、これらの差分はAが消えて58.26円となります。
よって1000ドルを日本円に両替する際は最大で58円ぐらい違ってくる計算になります。日本円を米ドルに交換する場合も似たような結果になります。
ちなみに同様の計算を他の通貨で行うと、ポンドの場合は101円の違いとなり、ユーロの場合は146円の違いとなります。
短期の検証:2023年1月4日~2023年12月29日
表の見方は長期の検証と同様です。
USD/JPY | GBP/JPY | EUR/JPY | |
月曜日 | -0.06951 | -0.23657 | -0.18019 |
火曜日 | 0.02471 | 0.07272 | 0.03553 |
水曜日 | 0.08867 | 0.20244 | 0.08245 |
木曜日 | 0.03086 | 0.08871 | 0.12740 |
金曜日 | -0.08169 | -0.14670 | -0.07653 |
日本円から外貨に換えるのは月曜が良いのは長期の検証と同様ですが、外貨から日本円に換えるのは水曜か木曜がいいようです。
また長期の検証と同様の計算をしたところ、1000ドルを日本円に両替する際は最大で170円ぐらい違ってくることがわかりました。
これはポンドの場合ですと439円、ユーロの場合ですと308円です。
まとめ
本記事では、何曜日に両替するのがベストなのかを過去データを用いて検証しました。以下に結論となる重要なポイントを示します。
なぜこのような傾向になるのかは、今後詳細に検討していきたいと考えています。
以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。